【完全版】NDフィルターとは何か? いつ使うか?種類,ND2,ND4,ND8,ND16,ND1000の違い(メリット・デメリットと注意点,シャッタースピード, 32,64,ストップ,段)

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カメラやドローンなどの撮影を行っていると必ず「NDフィルター」という名前を耳にします。レンズにくっつけると何やらオシャレな画像が取れるアイテムのように捉えている方もいると思いますが、実はNDフィルターは非常に奥が深いものです。

ND2, ND4, ND8, ND16, ND32, ND64, ND1000のように種類もたくさんあります。数値が大きければ大きいほどいいわけではなく、シーンや目的によって最適なNDフィルターを選択する必要があります。

ここでは、NDフィルターとは何か?やストップ(段)との違い、シャッタースピードとの関係についてまとめています。



NDフィルターとは何か?

NDフィルターとは「Neutral Density Filter」の略で、カメラのレンズに取り付けて使用するフィルターの一種で、光の量を均一に減少させるためのものです。

NDフィルターは写真や動画撮影において次のような用途で使用します。


NDフィルターの主な用途

NDフィルターの主な用途は次の3つです。

NDフィルターの主な用途
  1. 長時間露光の撮影(シャッタースピードが長いとき)
  2. F値を小さくした撮影(被写界深度の撮影)
  3. 動画撮影(180度シャッタースピードルール)


長時間露光の撮影

天気のいい日の屋外や明るい部屋の中などで、シャッタースピードを遅く(長く)して長時間露光の撮影をする場合に、カメラのセンサーが光を取り入れすぎて白飛びしてしまうことがあります。

そんなときに、NDフィルターを使うことで取り入れる光の量を抑え、白飛びせずに長時間露光の撮影をすることができます


例えば、滝を撮影するときに水の流れを滑らかに見せたいときに、三脚を使ってシャッタースピードを4~8秒と非常に長くするのが一般的です。このとき、NDフィルターを使わないと白飛びしてしまいますが、NDフィルターを使えば白飛びせずに滑らかな水の流れを写真に収めることができます。


F値を小さくした撮影

ボケボケの写真を撮影するには、F値を小さくすることが大きな要素の1つです。

ところが、F値を小さくすることは、絞りを広げることであり、より多くの光を取り込むことになります。

このため明るい場所でF値1.4などの広い絞りを使用すると、光の量が多すぎて露出オーバーになることがあります。

このような場合に、NDフィルターを使用することで、F値を小さくしつつ、適切な露出の保ことができます


動画撮影

動画撮影では自然な映像を撮影するために、シャッタースピードはフレームレートの約2倍分の1に設定するのが基本です。

例えば、24fpsであれば、シャッタースピードは1/48に設定します。ですが、明るい場所ではこの設定では露出オーバーになりがちです。

そんなときに、NDフィルターを使用することで適正な露出を保ちながら理想的なシャッタースピードを維持できます


ご参考

動画のフレームレートとシャッタースピードの関係については下記をご参考ください。

【動画撮影】fpsとシャッタースピードの最適な値|180度シャッタールールとは何か?


NDフィルターのメリットとデメリット

NDフィルターには次のようなメリットとデメリットがあります。

メリット
  • クリエイティブな表現が可能になる(普通では撮影できない写真が撮れる)
  • シャッタースピードを長くできるため、被写体をぼかせる。
  • F値を下げられるため、ポートレート写真において背景をぼかせる。
  • 動画撮影で理想的なシャッタースピードを維持しつつ、適切な露出を得ることができる。
デメリット
  • 画質の低下や色の偏りが生じることがある(高品質なNDフィルターなら最小限に抑えられる)
  • 可変NDフィルターでは、特定の減光量でクロスパターン(Xパターン)が発生することがある。



NDフィルターの種類

NDフィルターには以下の2つの種類があります。

NDフィルターの種類
  1. 固定NDフィルター
  2. 可変NDフィルター


固定NDフィルター

固定NDフィルターは、一定の光量を減少させるフィルターです。

例えば、ND2、ND4、ND8などがあります。ND2は光量を半分に、ND4は1/4に、ND8は1/8に減少させます。


可変NDフィルター

可変NDフィルターは、光量の減少を調整できるフィルターです。これにより、一つのフィルターで様々な減光レベルに対応できます。

多くの場合、リングを回すことで減光量を調整します。

例えば、NiSi 可変NDフィルター TRUE COLOR VARIO 1-5stops (ND2~32)は、ND2~32の間で光を減少させる量を調整することができます。

注意点

レンズ径によってサイズのあうフィルターも異なります。NDフィルターは高価なものも多いので間違えないように注意してくてください。

迷ったら、直系の大きいものを買っておけば、ステップダウンリング(2000円程度)を使うと小さいレンズにも使いまわすことができます。




    数値が大きいほど減光する

    NDフィルターにはND2、ND4、ND8、ND16、ND32、ND64、ND1000といったものがあります。

    NDの後ろの数値はどれだけ光を減少させるかを示しています。

    光を減少させるときは2の乗数ごとに減少させていくことが基本のため、NDの後ろに続く数値は、2, 4, 8, 16, 32, 64となっていくのが一般的です。

    中にはND1000というフィルターもありますが、これはかなり光を減少させるもので、4秒ぐらいから数分の長時間露光で撮影する場合に使います。

    ちなみに、光の減光する量をストップ(段)といいます。NDの後ろの数値や


    ストップ(stop)とは何か?

    NDフィルターの露出量の変化を表す単位は「ストップ(stop)」を使います。日本語では「段」といいます(※ステップ(step)ではない(紛らわしいですね))

    1ストップ(1段)の変化は、光量を半分にするか倍にすることを意味します。

    NDフィルターの場合、ストップはフィルターが光量を何段分減少させるかを示します。

    数値で言うと、2のn乗のnがストップです。例えば、ND8は2の3乗なので、3ストップとなります。ND1000は約1024なので、nの10乗で10ストップとなります。


    NDフィルターのストップ数と減光量の関係

    NDフィルターの後ろの数値やストップ数に対する減光量は以下のようになっています。

    NDフィルターのストップ数と減光量
    • ND2(1ストップ): 光量を1/2に減少
    • ND4(2ストップ): 光量を1/4に減少
    • ND8(3ストップ): 光量を1/8に減少
    • ND16(4ストップ): 光量を1/16に減少
    • ND32(5ストップ): 光量を1/32に減少
    • ND64(6ストップ): 光量を1/64に減少
    • ND1000(約10ストップ): 光量を1/1000に減少


    ストップ数とシャッタースピード

    NDフィルターのストップ数が大きくなればなるほど取り込む光の量を抑えることができます。

    つまり、NDフィルターの後ろの数値やストップなどの減光量はシャッタースピードをどれだけ遅くできるか?に影響します。

    取り込む光の量が1/2になれば、シャッタースピードを2倍にすることで、元の状態と同じだけの光を取り入れることになります。

    例えば、シャッタースピードが1/125秒で適正露出となるシーンで、各NDフィルターを使用した場合のシャッタースピードは以下のようにすることができます。

    ストップ数とシャッタースピード
    • ND2(1ストップ): 1/125秒 → 1/60秒
    • ND4(2ストップ): 1/125秒 → 1/30秒
    • ND8(3ストップ): 1/125秒 → 1/15秒
    • ND16(4ストップ): 1/125秒 → 1/8秒
    • ND32(5ストップ): 1/125秒 → 1/4秒
    • ND64(6ストップ): 1/125秒 → 1/2秒
    • ND1000(約10ストップ): 1/125秒 → 約8秒


    NDフィルターの選び方

    NDフィルターは数値が大きければいいというわけではありません。

    シーンや目的に応じて適切なストップ数のNDフィルターを選ぶことが大切です。上記のように何ストップのNDフィルターを使うかで適切なシャッタースピードが変わります。

    シャッタースピードから選ぶ

    このことから、シャッタースピードを何秒にしたいかでNDフィルターを選ぶことができます。例えば、1/4秒にしたければND32、8秒で撮影したければND1000といった感じです。

    そのほかにも以下のような状況で選択することができます。


    小さいF値:ND2~ND8(1~3ストップ)

    背景をぼかした写真を撮影したいときなど、明るい環境下でも小さいF値(1.4~2.8など)のように浅い被写界深度を維持したいときがあります。

    そういったときは、ND2〜ND8(1~3ストップ)ぐらいの少し暗くするNDフィルターが適しています。通常の撮影を少し暗くするといった用途です。


    動きのあるシーン:ND8~ND64(3~6ストップ)

    流れる水や車の動きを滑らかにしたい場合はシャッタースピードを1/15~1/2など、ほぼ1秒に近いぐらいの長時間露光を行います。

    例えば、滝や川の流れを撮影するときです。

    こういったときは、比較的減光量が大きい、ND8~ND64(3~6ストップ)のNDフィルターをつかって、しっかりと減光します。


    日中の長時間露光:ND1000(10ストップ)

    数秒~数分など、日中に約8秒以上の長時間露光をすることで、雲の流れをつなげたり、背景の動く人を写真から除外するときはND1000(10ストップ)を使います。

    海や湖の波を滑らかにしたり、雲の動きを強調したりすることができます。

    ND1000なので光量を1/1000にすることで、通常の1/1000のシャッタースピードにすることができます。


    ND2、ND4、ND8、ND16、ND32、ND64、ND1000の違い

    最後に、ND2、ND4、ND8、ND16、ND32、ND64、ND1000の違いについてまとめておきます。

    基本的な設定の前提

    以下で紹介するNDフィルターのシャッタースピードは次の条件の場合です。

    • 条件: 晴天の日中
    • 初期設定: ISO 100、絞り f/8
    • 基準シャッタースピード: 1/125秒(NDフィルター未使用時)
    注意点
    1. 曇りの場合は更に長いシャッタースピードが必要
      以下のシャッタースピードは晴天の日中を想定していますが、曇りの日や夕方など光量が少ない場合は、さらに遅いシャッタースピードが必要です。
    2. 絞りとISOによる調整
      絞りやISO感度の設定もシャッタースピードに影響するため、適宜調整が必要です。
      例えば、絞りをf/16に設定したり、ISO感度を200に設定することで、さらに適正な露出を得ることができます。


    ND2(1ストップ)

    • 減光量: 1段(光量を1/2に減少)
    • 最適なシャッタースピード: 1/125秒 → 1/60秒


    ND4(2ストップ)

    • 減光量: 2段(光量を1/4に減少)
    • 最適なシャッタースピード: 1/125秒 → 1/30秒


    ND8(3ストップ)

    • 減光量: 3段(光量を1/8に減少)
    • 最適なシャッタースピード: 1/125秒 → 1/15秒


    ND16(4ストップ)

    • 減光量: 4段(光量を1/16に減少)
    • 最適なシャッタースピード: 1/125秒 → 1/8秒


    ND32(5ストップ)

    • 減光量: 5段(光量を1/32に減少)
    • 最適なシャッタースピード: 1/125秒 → 1/4秒


    ND64(6ストップ)

    • 減光量: 6段(光量を1/64に減少)
    • 最適なシャッタースピード: 1/125秒 → 1/2秒


    ND1000(10ストップ)

    • 減光量: 約10段(光量を1/1000に減少)
    • 最適なシャッタースピード: 1/125秒 → 約8秒


    まとめ

    NDフィルターはたくさんの種類(ストップ)があり、撮影シーンや目的にあわせて使うことが大切です。目的別にざっくり分けると次の3つになります。

    1. ポートレート撮影(背景をぼかすために浅い被写界深度を使用):
      • ND2〜ND8: シャッタースピードを1/60秒〜1/15秒程度に設定
    2. 滝や川の流れを滑らかにする風景撮影:
      • ND8〜ND64: シャッタースピードを1/15秒〜1/2秒程度に設定
    3. 日中の長時間露光撮影:
      • ND1000: シャッタースピードを数秒から数分に設定(例えば、8秒〜2分程度)


    たくさんのNDフィルターを持ちすぎるも大変なため、ND2, ND32, ND1000の3つを使い分ければかなり応用の効いた写真を撮影することができます。

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