ドローンを飛ばすときに「ダウンウォッシュ」や「ボルテックス・リング・ステート」「地面効果」といった単語を耳にすることがあります。
ここでは、「ダウンウォッシュ」や「ボルテックス・リング・ステート」「地面効果」とは何か?をドローンが飛ぶ仕組みを踏まえて解説しています。
ドローンはどうやって浮くのか?
ドローンはプロペラの下についているモーターが回転することで、プロペラがクルクルと周り上に浮き上がることができます。
プロペラが回ることで浮き上がるその基本原理は飛行機やヘリコプターと全く同じです。
飛行機は飛行機自体が前に進むことで翼(ブレード)に空気が当たります。ドローンやヘリコプターはプロペラが回転することでプロペラ(ブレード)に空気が当たります。
翼やプロペラは独特な形状をしており、前方が膨らみ、後方が狭まっています。この前後の形状の差により、空気の流れに変化が生じます。
プロペラに当たった空気は通常よりも速く流れます。下方の流れよりも速く空気がシュンと駆け抜けるので、上方の気圧の方が低くなります。すると、気圧が低くなった場所を埋めるように機体を持ち上げる力が働きます。この力のことを「揚力(ようりょく)」と言います。
プロペラの回転速度が速くなればなるほど、上側の空気が速く流れ揚力が大きくなります。そして、揚力(浮く力)が機体の重量よりも大きくなったとき、機体が浮き上がります。
ドローンとヘリコプターの違い
ドローンとヘリコプターはどちらもプロペラを使っているので、動き方は同じように感じる方が多いです。ですが、大きな違いがあります。
ヘリコプターとドローンの大きな違いは、プロペラ自体が傾くかどうかです。
ヘリコプターのプロペラの動作原理
ヘリコプターはプロペラの回転面を傾けることができます。これにより発生する揚力をコントロールし、俊敏に好きな方向に進むことができます。
ドローンのプロペラの動作原理
ドローンのプロペラはヘリコプターと違って個別に傾けることができません。同じ角度でクルクル回り続けるだけです。
ではどうやって前後左右に自在に動けるかというと、それぞれのプロペラの回転数を変化させるためです。
次項でより詳しく解説していきます。
ドローンのプロペラ回転制御による移動の仕組み
前後に進む
ドローンを前に進ませたいときは、後方の2つのプロペラの回転数を上げる(あるいは前方の2つのプロペラの回転数を下げる)ことで、機体が前に傾き前方に進みます。
後ろに進ませたいときはその逆で、前方の2つのプロペラの回転数を上げる(あるいは後方の2つのプロペラの回転数を下げる)ことで、機体が後ろに傾き後方に進みます。
左右に進む
ドローンを右に進ませたいときは、左側の2つのプロペラの回転数を上げる(あるいは右側の2つのプロペラの回転数を下げる)ことで、機体が右に傾き右側に進みます。
左に進ませたいときはその逆で、右側の2つのプロペラの回転数を上げる(あるいは左側の2つのプロペラの回転数を下げる)ことで、機体が左に傾き左側に進みます。
旋回する
ドローンのプロペラは対角線上は同じ方向に回転するという特徴があります。
このため、旋回する場合はどちらかの対角線上にあるプロペラの回転数を下げるか上げることで、その場で旋回するこができます。
例えば、時計回りに回っているプロペラの回転速度を緩めると、反時計回りのプロペラの力の方が強くなり、反時計回りに回転します。
ダウンウォッシュとは何か?
ヘリコプターやドローンなどプロペラが回転すると、プロペラの下に強い下降気流が発生します。この下降気流のことを「ダウンウォッシュ」と呼びます。
ダウンウォッシュ自体はプロペラが回転すれば常に発生するものです。
ヘリコプターを例にするとより分かりやすいかもしれません。ヘリコプターが近づいてくるとものすごい風圧が生まれます。例えば海面上でホバリングすると、プロペラから生まれた下降気流により海面の周りが波立ちます。これがダウンウォッシュによる影響です。
ボルテックス・リング・ステート
ボルテックス・リング・ステートとは何か?
上記で解説したように、ドローンのプロペラが回転すればダウンウォッシュが生まれます。
例えば、ドローンが勢いよく下降した場合に、ダウンウォッシュよりも強い上昇気流が発生することがあります。
すると、ダウンウォッシュがプロペラの上側に回り込む現象が発生します。この状態になると本来ドローンを押し上げる力を生み出すための気流が、プロペラの周りでクルクルと回ってしまい、揚力が極めて少なくなります。
これは非常に危険な状態で、最悪の場合墜落することもあります。この状態のことを「ボルテックス・リング・ステート」と呼びます。
ボルテックス・リング・ステートはいつ発生する?
ボルテックス・リング・ステートは次のような場合に発生する可能性があります。
ボルテックス・リング・ステートの対処法
ボルテックス・リング・ステートは一気に真下に降りようとした場合に発生するリスクが高まります。
このため、前後左右にジグザグに動きながら下降したり、旋回しながら下降することで、ボルテックス・リング・ステートの発生を防ぐことができます。
なお、ドローンでは前後に動くことを「エレベーター」、左右に動くことを「エルロン」、旋回することを「ラダー」と言います。
地面効果
地面効果とは何か?
ヘリコプターやドローンが地上や水面スレスレを飛行するとき、ダウンウォッシュが地面や水面にあたり跳ね返ってきます。
この跳ね返ってきたダウンウォッシュにより気流が乱れることがあります。この現象を「地面効果」(グラウンド・エフェクト)と言います。
地面効果が発生すると、跳ね返ってきたダウンウォッシュにより揚力が増して離着陸が不安定になります。
地面効果の対処法
地面効果が発生したときは、上昇することで、地面からのダウンウォッシュの跳ね返りによる影響を失くすことができます。
最後に
ドローンを安全に操作するには、プロペラがどのように回転するかや、その制御方法によってどのように動くのか、また、気流の変化によってどういった危険性があるのかを知っておくことが大切です。
みなさんが大切なドローンを大切に使えることを願っています。それでは、よいドローンライフをお送りください。
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